第5章 歯科口腔保健の推進【横浜市歯科口腔保健推進計画】 1 策定にあたって (1)趣旨 市民の生涯にわたる歯科口腔保健の推進に関する施策を総合的かつ計画的に実施するため、歯科口腔保健の推進に関する計画(以下「歯科口腔保健推進計画」という。)を策定します。 (2)背景 歯と口の健康は、生活の質や心身の健康を保つ基礎であり、人生100年時代を迎え、生涯を自分の歯で過ごし、健康を維持していくために、ライフステージに応じた取組はさらに重要です。このような状況から制定された「横浜市歯科口腔保健の推進に関する条例」(以下「条例」という。)に基づいて、歯科口腔保健推進計画を、健康増進法により推進している横浜市の健康増進計画「第3期 健康横浜21」と一体的に策定します。 (3)目的 健康で豊かな生活の実現に向け、歯と口の健康づくりに市民自らが取り組めるよう、行政、関係機関や団体がそれぞれに求められる役割を十分理解し、相互連携のうえライフステージ等の現状や課題に応じて、歯科口腔保健の推進に取り組むことを目指します。 (4)計画期間 令和6年度から令和17年度 (5)位置づけ 「健康横浜21」の歯・口腔分野の取組としての位置づけや、「子ども・子育て支援事業計画」、「横浜市教育振興基本計画」、「横浜市高齢福祉計画・介護保険事業計画・認知症施策推進計画」、「横浜市障害者プラン」、「横浜市地域福祉保健計画」、「横浜市食育推進計画」、「よこはま保健医療プラン」、「横浜市国民健康保険保健事業実施計画(データヘルス計画)」及び「横浜市国民健康保険特定健康診査等実施計画」等の関連する計画と連携して取り組みます。 また、「歯科口腔保健の推進に関する法律」に基づく「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」、「神奈川県歯及び口腔の健康づくり推進条例」の施策の方向性や、数値目標を参照するなど、整合性を図りながら推進します。 2 歯科口腔保健の現状と取組の方向性 (1)横浜市における歯科口腔保健の現状 ア これまでの取組 横浜市では、平成13年に21世紀の新たな健康づくりの指針となる横浜市健康増進計画「健康横浜21」を策定し、ライフステージに応じた生活習慣の改善に取り組むべき事項の1つとして「歯の健康」の分野を設定しました。 平成31年、「条例」が制定され、各ライフステージや、妊婦や障害がある人など特化した取組が必要な対象像の現状や課題に応じた歯と口腔の健康づくりを推進しています。特に、成人期以降については、「第2期 健康横浜21」の中間評価(平成29年度)において、歯周疾患予防や口腔機能の低下(オーラルフレイル)の予防に重点的に取り組む必要があることが確認されたため、これらの取組を推進しています。 令和2年度末、「歯科口腔保健推進計画」の策定に向け、「横浜市歯科口腔保健 令和3年度から令和4年度の取組」(以下「取組」という。)をまとめ、「取組」の推進にあたり、各ライフステージ等に応じた指標(以下「取組指標」という。)を設定いたしました。 「取組指標」は次のとおりです。 乳幼児期の指標は、3歳児でむし歯のない者の割合 学齢期の指標は、12歳児の1人平均むし歯数 成人期の指標は、40歳代における進行した歯肉炎を有する者の割合、過去1年間に歯科健診を受けた者の割合、妊婦歯科健康診査受診率 高齢期の指標は、60歳代でなんでも噛んで食べることのできる者の割合、80歳で20し以上の自分の歯を有する者の割合 要介護高齢者の指標は、介護老人福祉施設・介護老人保健施設での定期的な歯科検診実施率 障害児及び障害者の指標は、障害(児)者入所施設での定期的な歯科検診実施率 イ 現状と課題  (ア)ライフステージ・対象像ごとの現状と課題 a 妊娠期 妊娠中は、ホルモンバランスの変化や「つわりで歯みがきができない」ことが口腔に影響し、「歯ぐきからの出血」や「むし歯」等、口の中の困りごとが生じやすい時期です。妊婦歯科健康診査の令和3年度における受診率は43.0%であり、横浜市の目標である40%を達成しましたが、妊娠期は歯の健康に関する重要な時期のため、引き続き啓発を行うことが必要です。 b 乳幼児期 令和3年度の3歳児健康診査における「むし歯のない児の割合」は93.0%であり、乳幼児期のむし歯のない児の割合は増加傾向にあります。むし歯がない児が増える一方で、一人で多くのむし歯がある児も存在しています。 乳幼児期は、乳歯が生え始め咀嚼機能を獲得し、口腔機能が発育・発達する大事な時期です。食生活をはじめ、歯みがきの習慣なども確立に向かう時期なので、口腔機能の健全な発育・発達につながる生活習慣を身につけられるよう支援等が必要です。育児に関わる多くの職種が連携を強化し、本人と養育者を支援するため、引き続き個々に応じたきめ細かい対策が必要です。 c 学齢期 12歳児の「1人平均むし歯数」は減少傾向にあり、令和3年度は0.48本と国の「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項(第1次)」の目標である1.0本未満を達成しています。加えて、令和3年度の「12歳児でむし歯のない者の割合」は68.7%でした。また、歯肉に異常のある中学生の割合は、平成29年度から令和元年度にかけて増加し、令和2年度、3年度は減少しました。 成人期の歯周病や口腔機能低下を予防するための対策が、この時期から必要です。例として、甘味食品の喫食習慣を改善し、栄養バランスの取れた食事を規則正しくとることや、よく噛んで食べる習慣、むし歯や歯肉炎を予防するためのセルフケアの方法を身に付けることなどが挙げられます。 自ら口腔ケアを行うことが困難な児童・生徒については、特性や発達の段階等に応じた支援が必要です。 また、喫煙が歯や口腔、全身の健康に影響を及ぼすことについて指導し、喫煙の防止につなげることが必要です。 この時期の歯科口腔保健の取組を充実させるためには、定期的な歯科健康診査を実施する学校歯科医やかかりつけ歯科医など、学校と家庭、地域の歯科医療機関が連携を密にして啓発や保健指導を行うとともに、歯科口腔保健の分野においても、保育所・幼稚園と小学校、小学校と中学校など、地域全体で切れ目なく連携して取り組むことが必要です。   d 成人期 横浜市の「40歳の未処置歯(治療が必要なむし歯)を有する人の割合」は、減少傾向ではありますが、令和2年度の横浜市結果では26.6%と国の「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項(第1次)」の目標値である10%に達していません。 「40歳代における進行した歯周炎(歯周ポケットが4mm以上)を有する人の割合」は、令和2年度の調査結果は54.1%であり、平成28年度と比較し、わずかに減少しているものの、明らかな変化はありませんでした。一方、令和3年度に横浜市歯周病検診を受診した人のうち、要精密検査(歯周病、その他の所見等があるため、さらに詳しい検査や治療が必要な者)と判定された人は73.5%でした。横浜市で要精密検査と判定された人の割合は、40歳、50歳、60歳、70歳の各年齢において、全国値を上回っています。歯周病は自覚症状が乏しく、重症化により歯を失うなど手遅れになることが多いため、むし歯対策とあわせた予防と早期発見が重要です。 また、横浜市の調査では、「歯を守るために、かかりつけの歯科医院がある人の割合」は平成25年度から令和2年度にかけて増加傾向でしたが、「過去1年間に歯科健診を受診した人の割合」は、変化がありませんでした。令和2年度の「過去1年間に歯科健診を受診した人の割合」を区ごとにみると、区間の差は1割未満であり、平成25年度及び平成28年度の結果とも、同様の傾向でした。 さらに「過去1年間に歯科健診を受診した人の割合」を年代別、性別に比較すると、男女とも若い年代で受診した人が少ない傾向です。この時期は、仕事や育児等で多忙であり、セルフケアや歯科健診の受診がおろそかになりがちです。むし歯や歯周病、口腔機能低下を予防するため、職域・地域の連携に着目した取組が必要です。 また、喫煙習慣や糖尿病が歯周病を悪化させることや、歯周病の予防や治療が生活習慣病の改善につながることが明らかになっています。令和2年度の横浜市調査では、歯周病が原因になる可能性がある疾患について「知っているものはない」と回答した人は56.1%であり、半数以上が歯周病と全身の病気との関連を認識していません。早期発見・早期治療が重症化予防につながるよう、普及啓発に取り組むことが必要です。 噛む、飲み込むなどの口腔機能が低下した状態をオーラルフレイルといいますが、オーラルフレイルの兆候は、50歳代頃には生じ始めるため、早い時期から予防する必要があります。令和2年度の横浜市調査では、オーラルフレイルの言葉を知っている人の割合は17.5%です。年代別、性別でみると、比較的割合の高い50歳代、60歳代の女性を除き、言葉を知っている人は2割以下です。市民自らが、ささいな口腔機能の低下に気づき、維持向上に取り組めるよう、普及啓発が必要です。 令和2年度の横浜市調査において、「知りたいと思う健康づくり情報」の設問に「歯の健康」と回答した人と、「特にない」と回答した人が、「健康づくりに関する情報を主にどこから入手しているのか」の設問に回答した結果は、双方ともに「インターネット」を多く回答しています。歯の健康に関心のある人、健康づくりに関心のない人の双方に対する普及啓発方法として、インターネットを介した情報発信が方策の一つに考えられます。 e 高齢期 「60歳代でなんでも噛んで食べることのできる人の割合」は、令和2年度の調査結果は72.8%でした。「80歳で20し以上の自分の歯を有する人の割合」は平成29年から令和元年の調査結果は64.9%でした。 また、横浜市で「定期的な歯科検診を受診する機会を提供する介護老人福祉施設及び介護老人保健施設の割合」は、令和2年度は87.4%でした。令和3年度の介護報酬改定において、施設系サービスにおける口腔衛生管理が強化され、入所施設での歯科口腔保健の体制整備の取組が進んでいます。 自分の歯を多くもつ高齢者の割合は増加していますが、年齢が高くなるほど歯周病が進行しやすくなります。また、オーラルフレイルが進むことによって、低栄養状態となり、やがて全身の虚弱化、要介護状態を引き起こすことが明らかになってきました。高齢者が、住み慣れた地域の中でいつまでも健康に生活できるよう、住民主体の通いの場等、地域の介護予防の取組と連動させながら、むし歯や歯周病の対策に加え、口腔機能の維持・向上に向けた、本人や支援者への支援が必要です。   f 障害児及び障害者 障害児や障害者は、自ら口腔ケアを行うことや定期的な歯科健診を受診することが難しい場合があるため、むし歯や歯周病のリスクが高い場合があります。むし歯や歯周病の管理だけでなく、摂食嚥下機能等の管理を行うなど、障害の特性や口腔機能の発達の程度に応じたきめ細やかな口腔ケアの支援が必要とされています。 障害児や障害者が口腔の健康を維持しながら質の高い生活を送れるよう、家族や介助者などの支援者による関わりが重要です。 神奈川県健康増進課調べによると、神奈川県全域で定期的な歯科検診を受診する機会を提供する障害児者入所施設の割合は、平成28年度は94.7%、令和2年度は77.5%でした。障害児者入所施設での歯科検診のほか、令和2年度に口腔ケアを実施している施設は88%であり、障害児者入所施設における歯科口腔保健の取組が進んでいます。 一方、在宅で生活又は療養されている人の歯科口腔保健の現状は明らかになっていないため、地域活動支援センター等の通所施設や、関係機関・団体等との連携のもと、把握を進めていく必要があります。 (イ)ライフステージ・対象像に共通する現状と課題 a 災害に備えた対策 災害発生時、ライフラインが寸断されて断水が続くと、歯みがきや義歯の手入れなどの口腔ケアが行き届かず、口腔内を清潔に保つことが困難になります。 食生活の変化や、十分な水分摂取ができないことからも、歯や口腔内に汚れがたまって、むし歯や歯周病が発生しやすくなり、普段からむせやすい高齢者は、口腔内の細菌が原因で誤嚥性肺炎を引き起こしやすくなります。 令和2年度の横浜市調査では、災害に備えて歯ブラシ、デンタルリンスなどの「口腔ケア用品」を準備している人は19.6%です。災害時の口腔ケアの重要性や、非常持出品に歯ブラシ、デンタルリンスなどの口腔ケア用品を準備しておくことについて普及啓発が必要です。 b 情報共有と情報発信 歯科医療関係者、保健医療関係者をはじめとした関係機関・団体間での取組や連携が促進されるよう、各分野における各種連絡会等を通じて、歯科口腔保健に関する情報共有を行うことが大切です。 高齢者や障害者、外国人は情報収集の手段が限られ、必要な情報を受け取りにくい状況があるため、やさしい日本語や多言語に対応する視点も必要です。また、若い世代は日常的な情報はSNSで入手する傾向が高まっています。対象者に応じて、情報の内容や発信方法の工夫が求められています。 c 実態把握 妊娠期から高齢期までの各ライフステージや対象像に対して行われる歯科健康診査の結果や、事業評価、アンケートをはじめとした意識調査等の結果から、市民の歯科口腔保健の現状分析を行っています。今後も、市民の歯科口腔保健の実態を分析し、ニーズの把握を進めることが必要です。 (2)取組の方向性 歯科口腔保健の推進にあたり、目標を設定するとともに、人の生涯を経時的に捉えた健康づくりであるライフコースアプローチの重要性を踏まえ、各ライフステージ・対象像の特徴や課題に応じた施策・取組を、関係者がそれぞれの立場から推進していきます。 ア 基本目標 「歯と口腔の健康が健康寿命の延伸及び生活の質の向上に重要な役割を果たす」という条例の基本理念の下、横浜市における歯科口腔保健の現状と課題を踏まえ、「生涯を通じて食事や会話ができる」という基本目標を設定します。 生涯を通じて食事や会話ができるようになるには、「食べること」、「話すこと」などの口腔機能を育て、むし歯や歯周病などの歯や口の病気を防ぎ、口腔機能の低下を予防していくことが必要です。 イ 行動目標 基本目標を達成するため、「むし歯・歯周病を予防する」、「口腔機能の健全な発育・発達・維持向上に努める」という2つの「行動目標」を設定します。2つの「行動目標」は、それぞれ単独で達成するものではなく、互いに影響し合うものです。行動目標は、歯科口腔保健にかかる健康行動の中から重要なものを設定しています。 (3)関係者の役割 総合的かつ計画的な歯科口腔保健の推進には、関係者の理解と協力が不可欠です。市民、横浜市、歯科医療等関係者、保健医療等関係者及び事業者等の関係者が、それぞれの立場から歯と口腔の健康づくりを推進していきます。 ア 市民 生涯を自分の歯で過ごし、健康で豊かな生活を維持していくためには、自らが、歯科口腔保健に関する正しい知識を持ち、毎日の適切な口腔ケア、定期的な歯科健康診査の受診などにより、むし歯や歯周病などの予防や早期治療に取り組み、生涯を通じて食事や会話ができるよう目指します。 イ 横浜市 市民の主体的な歯と口腔の健康づくりに関する取組を推進し、健康寿命の延伸につなげるためには、歯科医療等関係者及びその他事業者・関係機関・団体等と連携しながら、様々な施策を展開します。 また、国や県の動向を注視するとともに、地域の歯科口腔保健の現状を把握し、その課題解決に向けて確かな医学的根拠に基づく知識や情報を適切に発信し、歯科疾患の予防や口腔機能の維持・向上に向けた取組を推進していきます。 ウ 歯科医療等関係者(歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士等) かかりつけ歯科医や施設の協力歯科医療機関として、定期的な歯科健診や専門的な口腔ケアを提供します。 また、歯科口腔保健を推進するため、市や関係機関等が実施する施策や事業へ協力し、良質かつ適切な歯科医療及び歯科口腔保健指導を実施するとともに、歯周病と全身疾患との関連性や全身の健康を守るための歯科口腔保健の重要性について普及啓発します。 さらに、自らの技術の向上と知見を深めるために、研修や人材育成等をすすめます。 エ 保健医療等関係者、地域活動団体及び事業者等(保健、医療、福祉、介護、保育、教育) 歯と口腔の健康が全身の健康の維持・向上に重要な役割を果たすことを理解し、それぞれの業務において、歯と口腔の健康づくりに取り組みます。 歯科医療等関係者と連携して、子どもとその養育者、事業所の従業員、地域住民、並びに日常生活において適切な口腔ケア等が困難な人の家族や支援者に対し、歯科疾患予防の重要性や口腔機能の維持・向上等の歯と口腔の健康づくりについて普及啓発します。 3 歯科口腔保健の推進に関する施策 (1)ライフステージ・対象像に着目した施策 ア 妊娠期 (ア)妊娠中の歯科健診の受診勧奨と正しい知識の普及啓発 a 妊娠中の口腔ケアの重要性について理解を深め、この時期から家族の歯と口腔の健康づくりに関心が持てるよう、母子健康手帳の交付時に面接を行うほか、個別の相談や教室等で正しい知識の普及啓発を行います。 b 産婦人科の受診をはじめとした妊娠期の様々な機会にあわせて、妊婦歯科健康診査の受診の必要性や、かかりつけ歯科医を持ち、継続的に歯科健診を受ける重要性を多くの妊婦が認識できるよう啓発を行います。 イ 乳幼児期 (ア)健全な口腔機能の育成 a むし歯予防に加え、離乳食・幼児食の食べ方などの離乳食教室等での普及啓発、指しゃぶりといった口腔習癖の対応など、健全な口腔機能の発達の支援に取り組みます。 (イ)本人と養育者への支援 a 食事や間食の習慣等の生活環境、むし歯の状況等の健康状態、養育者の状況や考えを把握し、適切に養育ができるよう支援します。 b 子育て支援を行う職域や地域の支援者へ歯科口腔保健の正しい知識を啓発し、市民に正しい情報を発信していただけるように研修を実施します。 c かかりつけ歯科医をつくり、口腔機能の発達段階に応じた適切な支援を受ける重要性を普及啓発します。 d 全市で実施する乳幼児健康診査や教室等の歯科口腔保健の向上を目的とした事業において共通媒体を用い、指導・相談の質を確保します。 e 日本語での情報収集が難しい外国人に対し、外国語版啓発媒体を用いて歯科口腔保健の正しい知識を啓発し、適切に養育できるよう支援します。 ウ 学齢期 (ア)適切な生活習慣の獲得  a 児童・生徒が歯と口腔の健康の大切さに理解を深め、主体的にむし歯や歯肉炎予防のセルフケアに取り組み、歯や歯肉の状態を自ら観察できる力を育てるため、啓発に取り組みます。  b 噛む、飲み込むなどの口腔機能の発育・発達を促す食習慣の形成のため、食育と連携した取組を行います。  c むし歯や歯肉炎を予防するため、かかりつけ歯科医を持ち、定期的な歯科健診と専門的ケアを受けることを促します。 (イ)特性等に応じた支援  a 児童・生徒の発達の段階や特性等に応じた歯科口腔保健指導について教職員や保護者へ啓発を行い、歯と口腔のケアの重要性に関する理解を深めます。 (ウ)関係者との連携  a 就学前・小学校・中学校における個人や地域を視点とした歯科口腔保健の連携を推進します。 エ 成人期 (ア)セルフケアや定期的な歯科健診  a むし歯や歯周病の予防のため、適切なセルフケアをする習慣が身につくよう啓発します。  b かかりつけ歯科医を持ち、定期的な歯科健診と専門的ケアを受けることの重要性を啓発します。  c 成人期の特徴をとらえ、学校や事業所等と連携した、学生や働き世代への口腔ケアの重要性等、各世代に応じた必要な情報を啓発します。  d 入手しやすい方法で、歯と口腔の健康づくりに関する情報発信を行います。 (イ)生活習慣病対策との連携  a 糖尿病等の生活習慣病対策と連携し、全身疾患と歯科疾患との関連性の啓発や、生活習慣改善の支援に取り組みます。 (ウ)オーラルフレイルの認知度  a オーラルフレイルを理解し、早い時期から予防できるよう関係機関・団体等と連携して、普及啓発に取り組みます。 オ 高齢期 (ア)歯科疾患の予防と口腔機能の維持  a 歯の喪失や加齢等に伴う口腔状況の変化に応じて、適切な口腔ケアをする習慣が身につくよう啓発します。  b かかりつけ歯科医を持ち、定期的な歯科健診と専門的ケアを受けることの重要性を啓発します。  c 市民や関係職種がオーラルフレイルに関する理解を深め、予防や口腔機能の維持改善に取り組めるよう、地域の介護予防活動グループ等の団体・関係機関や保健・医療・福祉・介護の多職種と連携して、普及啓発に取り組みます。 (イ)要介護高齢者の特性に応じた支援  a 歯の喪失や口腔機能低下を予防し、「食べる」、「話す」機能を長く維持できるように、家族や介助者など支援者に対し、歯と口腔の健康の重要性について理解を深め、本人が日常的に適切な口腔ケアを受けられるように支援します。 カ 障害児及び障害者 (ア)障害児及び障害者の特性に応じた支援  a 歯の喪失や口腔機能低下を予防し、「食べる」、「話す」機能を長く維持できるように支援します。  b 本人、家族や介助者など支援者に対し、歯と口腔の健康の重要性について理解を深めます。  c 身近な地域で、かかりつけ歯科医による口腔ケアを受けられるよう、歯科医療等関係機関と連携して環境整備を進めます。  d 障害福祉の関係機関・団体等と連携し、障害児及び障害者の特性に応じた歯科口腔保健の正しい知識の普及啓発に取り組みます。 (2)ライフステージ・対象像に共通して推進する取組 ア 災害に備えた対策 (ア)災害時の口腔ケアの普及啓発  a 災害時の口腔ケアの重要性や、飲料水等の確保が難しい場面での口腔ケア方法等についての普及啓発を進めます。  b 避難グッズに歯ブラシ、デンタルリンスなどの口腔ケア用品の準備をしておくよう普及啓発を進めます。 イ 情報共有と情報発信 (ア)関係機関・団体等との適切な情報の共有及び市民への情報発信  a 関係機関・団体等の連絡会等の場において、情報共有を行い、情報発信・意見交換を進めます。また、機関紙・広報誌等と連携した広報を行います。  b 歯や口の健康に関する各種リーフレットのやさしい日本語版、多言語版を作成し、情報発信を進めます。 ウ 実態把握 (ア)歯科口腔保健の実態把握  a 妊娠期から高齢期までの各ライフステージや対象像等に対して行われる歯科健康診査の結果や、歯科口腔保健事業等から得られる情報を収集し、市民の歯科口腔保健にかかる実態分析を進めます。  b 市民の歯科口腔保健にかかる実態分析とあわせ、県や国等が有するデータを積極的に活用し、課題の抽出やニーズの把握を行います。 4 推進・評価体制  「健康横浜21推進会議」(以下「推進会議」という。)の部会として、「歯科口腔保健推進検討部会」(以下「検討部会」という。)を設置しています。  歯科口腔保健推進計画の推進にあたって、市は、各施策の進捗状況や各種指標の達成状況を適宜把握し、推進会議及び検討部会を通じて共有していきます。また、推進会議及び検討部会は、市に対し、歯科口腔保健の推進に関して適宜必要な提言を行います。  市は、推進会議及び検討部会からの提言や、把握した検証結果に基づき評価を行います。 5 計画の評価 (1)評価スケジュール  歯科口腔保健推進計画は、国が定めた「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」に基づいて推進する「二十一世紀における第三次国民健康づくり運動(健康日本21(第三次))を踏まえた「第3期健康横浜21」及び、「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項(第2次)」(歯・口腔の健康づくりプラン)にあわせ、令和6年度から令和17年度の12年間を計画期間とします。また、目標達成に向けた効果的な施策展開を図るため、第3期健康横浜21とあわせて、令和11年度には中間評価、計画最終年の前年度である令和16年度には、取組の最終評価を実施します。 (2)評価と指標設定の考え方  基本目標及び行動目標の達成度を測るため、ライフステージにあわせて設定した12の「指標」の変化を確認して評価します。「指標」は、適切な進捗管理と評価を行うことで、さらなる取組の推進を図ることができるものを選定しています。「指標」の設定にあたっては、国の指標や、最終評価まで安定して把握できることも考慮しています。  また、「指標」に加え、歯科口腔保健の推進に関する施策の立案や「第2期 健康横浜21」、「取組指標」の経年変化を捉えた検証等に活用するため、「参考指標」を設けます。 目標・指標と、ライフステージの関係 基本目標は「生涯を通じて食事や会話ができる」とします。 行動目標 1 むし歯・歯周病を予防する 2 口腔機能の健全な発育・発達・維持向上に努める 各ライフステージにおける指標は次のとおりです。 妊娠期の指標:妊婦歯科健康診査受診率 乳幼児期の指標:3歳児でむし歯のない者の割合および3歳児で4本以上のむし歯のある者の割合 学齢期の指標:12歳児でむし歯のない者の割合および中学生における歯肉に異常を有する者の割合 成人期および高齢期の指標:20歳以上における未処置歯を有する者の割合、40歳以上における歯周炎を有する者の割合、40歳以上における自分の歯が19し以下の者の割合、20歳代から60歳代における過去1年間に歯科健診を受けた者の割合、20歳代から60歳代における「オーラルフレイル」の言葉を知っている者の割合、50歳以上におけるなんでも噛んで食べることができる者の割合、80歳で20し以上の自分の歯を有する者の割合 なお、参考指標は次の7つです。  1:12歳児の1人平均むし歯数  2:20代から30代における歯肉に炎症所見を有する者の割合  3:40歳代における歯周炎を有する者の割合  4:20歳代から30歳代における過去1年間に歯科健診を受けた者の割合  5:40歳代から50歳代における過去1年間に歯科健診を受けた者の割合  6:60歳代におけるなんでも噛んで食べることができる者の割合  7:口腔衛生に関する取組を行う障害(児)者施設の割合 (3)目標値  目標値の設定については、「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項(第2次)」(歯・口腔の健康づくりプラン)等の目標値を参考にしつつ、令和6年度の策定時値を予測し、最終評価時に、その値が相対的に5%以上改善することを基本的な考え方としています。 1 妊婦歯科健康診査受診率 直近値:43%(令和3年度把握) 目標値:40% 目標の方向:増加 2 3歳児でむし歯のない者の割合 直近値:93%(令和3年度把握) 目標値:90% 目標の方向:増加 1および2の目標値は、横浜市子ども・子育て支援事業計画で設定した令和6年度の目標値を歯科口腔保健推進計画の目標値とし、横浜市子ども・子育て支援事業計画にて新たな目標値を設定後、歯科口腔保健推進計画の目標値として改めて設定する。 3から12の目標値の把握年度は令和14年度とする。 3 3歳児で4本以上のむし歯のある者の割合 直近値:今後把握 目標値:0% 目標の方向性:減少 4 12歳児でむし歯のない者の割合 直近値:68.7%(令和3年度把握) 目標値:72.2% 目標の方向性:増加 5 中学生における歯肉に異常のある者の割合 直近値:16.4%(令和3年度把握) 目標値:15.5% 目標の方向性:減少 6 20歳以上における未処置歯を有する者の割合 直近値:23%(令和2年度把握) 目標値:20% 目標の方向性:減少 7 40歳以上における歯周炎を有する者の割合 直近値:65.3%(令和2年度把握) 目標値:60% 目標の方向性:減少 8 40歳以上における自分の歯が19し以下の者の割合 直近値:18.4%(令和2年度把握) 目標値:15% 目標の方向性:減少 9 20歳代から60歳代における過去1年間に歯科健診を受けた者の割合 直近値:48.2%(令和2年度把握) 目標値:55% 取組の方向性:増加 10 20歳代から60歳代におけるオーラルフレイルの言葉を知っている者の割合 直近値:17.5%(令和2年度把握) 目標値:20% 目標の方向性:増加 11 50歳以上におけるなんでも噛んで食べることができる者の割合 直近値:71.8%(令和2年度把握) 目標値:80% 目標の方向性:増加 12 80歳で20し以上の自分の歯を有する者の割合 直近値:55.6%(令和2年度把握) 目標値:60% 目標の方向性:増加 参考資料 横浜市歯科口腔保健の推進に関する条例(平成31年2月25日)(条例第1号) (目的) 第1条 この条例は、歯及び口腔の健康が健康寿命の延伸及び生活の質の向上に重要な役割を果たしていることに鑑み、歯科口腔保健の推進に関し、基本理念を定め、横浜市(以下「市」という。)、市民、歯科医療等関係者、保健医療等関係者及び事業者(労働者を使用して市内で事業を行う者をいう。以下同じ。)の責務を明らかにするとともに、歯科口腔保健の推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、歯科口腔保健の推進に関する施策を総合的かつ計画的に実施し、もって市民の生涯にわたる健康づくりに寄与することを目的とする。 (定義) 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 (1) 歯科口腔保健 歯科疾患の予防等による歯及び口腔の健康の保持増進並びにこれらの機能の維持向上を図ることをいう。 (2) 歯科医療等業務 歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士その他の歯科医療又は保健指導に係る業務をいう。 (3) 歯科医療等関係者 歯科医療等業務に従事する者及びこれらの者で組織する団体をいう。 (4) 保健医療等関係者 保健、医療、福祉又は教育に係る業務に従事する者であって歯科口腔保健に関する業務を行うもの(歯科医療等関係者を除く。)及びこれらの者で組織する団体をいう。 (5) 歯科検診 歯及び口腔の検診(健康診査及び健康診断を含む。)をいう。 (基本理念) 第3条 歯科口腔保健の推進に関する施策は、次に掲げる事項を基本理念として行うものとする。 (1) 歯及び口腔の健康が健康寿命の延伸及び生活の質の向上に重要な役割を果たしているという認識のもと、市民が、歯科口腔保健に関する正しい知識を持ち、生涯にわたって日常生活において行う歯科口腔保健に関する取組を推進すること。 (2) 乳幼児期から高齢期までのそれぞれの時期における歯並びに口腔及びその機能の状態並びに歯科疾患の特性に応じて、適切かつ効果的に歯科口腔保健を推進すること。 (3) 保健、医療、福祉、労働衛生、教育、食育その他の歯及び口腔の関連分野における施策との連携を図り、その関係者の協力を得て、総合的かつ計画的に歯科口腔保健を推進すること。 (市の責務) 第4条 市は、前条の基本理念にのっとり、歯科口腔保健の推進に関する施策を策定し、及び総合的かつ計画的に実施するものとする。 2 市は、歯科口腔保健の推進に関する施策の策定及び実施に当たっては、国、神奈川県、歯科医療等関係者及び保健医療等関係者との連携及び協力に努めるものとする。 3 市は、市民が歯科口腔保健に関する理解を深め、市民による歯科口腔保健に関する活動への参加を促進するため、歯科口腔保健に関する知識及び歯科疾患の予防に向けた取組に関する普及啓発、歯科口腔保健に関する市民の意欲を高めるための運動の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。 4 市は、事業者その他の者が行う歯科口腔保健に関する取組の効果的な推進を図るため、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。 (市民の責務) 第5条 市民は、歯科口腔保健に関する理解を深め、歯科検診及び歯科保健指導を活用する等、生涯にわたって日常生活において自ら歯科口腔保健の取組を行うよう努めるものとする。 (歯科医療等関係者の責務) 第6条 歯科医療等関係者は、良質かつ適切な歯科医療及び歯科保健指導を行うよう努めるものとする。 2 歯科医療等関係者は、歯科口腔保健(歯及び口腔の機能の回復によるものを含む。)の推進に関し、保健医療等関係者との連携に努めるとともに、市が実施する歯科口腔保健の推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。 (保健医療等関係者及び事業者の責務) 第7条 保健医療等関係者は、その業務において、歯科口腔保健の推進に積極的な役割を果たすよう努めるとともに、日常生活において歯科口腔保健に関する取組が困難な者に対して、必要な支援を行うよう努めるものとする。 2 保健医療等関係者は、歯科口腔保健の推進に関し、歯科医療等関係者との連携に努めるとともに、市が実施する歯科口腔保健の推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。 3 事業者は、その従業員の歯科口腔保健の推進に積極的な役割を果たすよう努めるものとする。 (基本的施策) 第8条 市は、歯科口腔保健を推進するため、次に掲げる事項を基本とする施策を策定し、及び実施するものとする。 (1)市民が、歯科口腔保健に関する正しい知識を持ち、日常生活において行う歯科口腔保健に関する取組の推進に関すること。 (2)市民が、定期的に歯科検診を受けるための勧奨及び必要に応じて歯科保健指導を受けるための勧奨に関すること。 (3)妊娠中における歯科口腔保健の推進並びに歯科口腔保健を通じた母体の健康の保持及び胎児の健全な発育に関すること。 (4)乳幼児期及び学齢期(小学校就学の始期から満18歳に達するまでの期間をいう。)における歯科口腔保健の推進及び歯科口腔保健を通じた健全な育成に関すること。 (5)成人期(満18歳から満65歳に達するまでの期間をいう。)における歯科口腔保健の推進に関すること。 (6)高齢期における歯科口腔保健の推進に関すること。 (7)障害児及び障害者の歯科口腔保健の推進に関すること。 (8)歯科口腔保健の観点からの食育及び糖尿病その他の生活習慣病に対する対策の推進に関すること。 (9)喫煙による口腔内への影響に対する対策の推進に関すること。 (10)歯科医療等関係者及び保健医療等関係者に対する情報の提供その他連携強化を図るための体制の整備に関すること。 (11)災害時における歯科口腔保健の推進に関すること。 (12)前各号に掲げるもののほか、歯科口腔保健の推進に関すること。 (歯科口腔保健推進計画の策定) 第9条 市は、市民の生涯にわたる歯科口腔保健の推進に関する施策を総合的かつ計画的に実施するため、歯科口腔保健の推進に関する計画(以下「歯科口腔保健推進計画」という。)を定めるものとする。 2 市は、歯科口腔保健推進計画を定めるに当たっては、健康増進法(平成14年法律第103号)第8条第2項の規定に基づき策定する健康増進計画と整合性を図るとともに、市域における官民データ(官民データ活用推進基本法(平成28年法律第103号)第2条第1項に規定する官民データをいう。)を活用するものとする。 (財政上の措置) 第10条 市は、歯科口腔保健の推進に関する施策を実施するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。 (意見聴取) 第11条 市長は、歯科口腔保健推進計画を策定し、若しくはその進捗管理を行い、又は歯科口腔保健の推進に関する重要事項を定めるに当たっては、横浜市附属機関設置条例(平成23年12月横浜市条例第49号)に基づく健康横浜21推進会議の意見を聴くものとする。 (委任) 第12条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が定める。 附 則 この条例は、平成31年4月1日から施行する。