第2章 横浜市民の健康を取り巻く現状 1 社会背景 (1)人口と世帯 <人口と世帯>の要点 ・市総人口の4人に1人は65歳以上の高齢者です。高齢化率は今後も上昇すると予測されます。 ・市の世帯の約4割は一人暮らしの世帯です。 ・市の世帯の約2割は高齢単身または60歳以上の夫婦のみの世帯です。  令和5年(2023年)の横浜市の人口は377万人で、年齢3区分別では0~14歳が42万7千人(11.6%)、15~64歳が231万7千人(63.1%)、65歳以上が92万7千人(25.3%)となっています。  平成25年(2013年)と比較して、総人口は369万7千人から2.0%増加していることに対し、高齢者人口(65歳以上の人口)は、78万7千人から17.8%増加しており、高齢化が急速に進展しています。将来人口推計では、人口が減少する一方で、65歳以上の人口は増加し続け、令和17年(2035年)には高齢化率が30.4%まで上昇すると予測されています。  世帯について見ると、令和2年(2020年)の一般世帯174万4千世帯のうち、家族類型別では、単独世帯が最も多い40.1%(69万9千世帯)を占めています。  また、高齢者人口の増加に伴い、「高齢夫婦世帯(夫が65歳以上で妻が60歳以上)」と「高齢単身世帯」の合計である「高齢世帯」も増加しています。一般世帯に占める高齢世帯は、平成22年(2010年)は18.0%でしたが、令和2年(2020年)には21.8%となっています。 (2)区別に見る人口構造の特性 <区別に見る人口構造の特性>の要点 ・人口は30万人以上の区(港北、青葉区)もあれば、15万人未満の区(西、栄、瀬谷区)もあり、高齢化率は全国平均28.5%(令和4年(2022年)1月1日時点 住民基本台帳)を超える区(港南、旭、金沢、栄、泉区)もあれば、超高齢社会と言われる21%に達していない区(西、港北、都筑区)もあるなど、市内各区の人口構造は様々です。 ア 人口  行政区別の人口を見ると、令和5年(2023年)3月31日時点の住民基本台帳では、30万人以上が港北、青葉の2区、25万人以上が鶴見、戸塚の2区、20万人以上が神奈川、港南、保土ケ谷、旭、都筑の5区、15万人以上が中、南、磯子、金沢、緑、泉の6区、10万人以上が西、栄、瀬谷区の3区となっています。  高齢者人口(65歳以上)は戸塚が最も多く、旭、港北の順に続き、このほかに鶴見、港南、青葉区で6万人を超えています。高齢化率は栄が最も高く、金沢、旭、港南、泉区の順に続きます。この5区は全国値28.5%(令和4年(2022年)1月1日時点 住民基本台帳)を超えています。高齢化率が21%を超えると超高齢社会と言われますが、市内18区では西、港北、都筑区以外の15区が該当しています。 イ 世帯  行政区別の世帯数は、令和2年(2020年)の国勢調査によると、港北が最も多く、鶴見、青葉、神奈川、戸塚、旭、南区の順で続き、この7区は10万世帯を超えています。  高齢世帯について見ると、旭が最も多く、戸塚、港北区の順で続きます。  一般世帯に占める高齢世帯の割合は栄が最も高く、旭、金沢、港南、泉区と続きます。市内18区では西区を除いた17区が全国値15.7%を上回っています。 (3)労働力率の推移と特性 <労働力率の推移と特性>の要点 ・男性の労働力率は25歳から59歳までが90%台と高く、それ以外の年齢階級で低い「台形型」となっています。 ・女性の労働力率は、25~29歳と45~49歳を頂点とし、35~39歳を底とする「M字カーブ」となっています。昭和60年以降の女性の労働力率は、全ての年齢階級において令和2年が最高値となり、25歳から49歳までの各年齢階級間における差も縮小しています。「M字カーブ」の底が上昇し「台形型」に近づいています。  労働力率とは、15 歳以上人口に占める労働力人口の割合のことをいいます。労働力人口には、就業者と完全失業者(調査期間中、収入を伴う仕事を少しもしなかった者のうち、仕事に就くことが可能であって、かつ、公共職業安定所に申し込むなどして積極的に仕事を探していた者)が含まれます。  令和2年国勢調査の「就業状態等基本集計結果」の横浜市分によると、労働力人口は2,074,042人で、前回の平成27年調査と比べ74,801人(3.7%)の増加となっています。このうち男性は1,174,977人(構成比56.7%)、女性は899,065人(同43.3%)で、前回と比べ男性は1,722人(0.1%)減少し、女性は76,523人(9.3%)増加となっています。  労働力率については、男性は74.0%で前回と比べ0.5ポイント上昇、女性は54.5%で前回と比べ4.1ポイント上昇となっています。男性は25歳から59歳までの各年齢階級が90%台と高く、それ以外の年齢階級で低い「台形型」となっていますが、女性は25~29歳の88.3%と45~49歳の77.6%を頂点とし、35~39歳の73.9%を底とする「M字カーブ」となっています。男女雇用機会均等法が施行される直前の昭和60年から令和2年までの女性の労働力率を比較すると、全ての年齢階級で令和2年の労働力率が最高となっています。女性の25歳から49歳までの各年齢階級間における差が縮小していて「M字カーブ」の底が上昇し、台形に近づいています。 2 主要な疾病の状況 (1)平均寿命と健康寿命の推移 <平均寿命と健康寿命の推移>の要点 ・平均寿命は男女共に全国値を上回っており、区別に見ると全国の市区町村の上位に入る区もあります。悪性新生物、心疾患及び脳血管疾患の3死因を除去した場合に、男性6.65年、女性5.16年延びるものと算出されています。 ・健康寿命もこの9年で男女共に延びていますが、全国の延びを下回り、特に女性の延びが鈍化しています。成人期・壮年期への対策として、腰痛症、こころの病気、歯の病気、脂質異常症等の対策が必要と示唆されています。 ア 平均寿命  0歳の平均余命である「平均寿命」は、全年齢の死亡状況を集約したものであり、保健医療福祉水準の総合的指標として広く活用されています。5年ごとに都道府県別生命表及び市区町村別生命表が作成され、横浜市及び行政区別の平均寿命が公表されています。  令和2年(2020年)の都道府県別生命表によると、横浜市の男性の平均寿命は82.32年、女性は88.08年となっており、平成22年(2010年)と比較して男性は2.03年、女性は1.29年延びています。  令和2年(2020年)の全国値(都道府県別生命表:男性81.49年、女性87.60年)と比較すると、男性は0.83年、女性は0.48年、横浜市が上回っています。この10年間の延びにおいても、男性は0.13年、女性は0.04年、横浜市が上回っています。  また、令和2年の特定の死因を除去した場合の平均寿命の延び(その死因が克服されたと仮定した場合の平均寿命の延び)について、横浜市が全国値よりも大きい値となっているのは、男性では心疾患、肝疾患、新型コロナウイルス感染症、女性では不慮の事故、自殺、肝疾患、新型コロナウイルス感染症となっています。悪性新生物、心疾患及び脳血管疾患の3死因を除去した場合の平均寿命の延びについては、男性が6.65年、女性が5.16年となっています。  行政区別の平均寿命を見ると、平均寿命の最も高い区と最も低い区との差は、平成22年(2010年)には、男性5.0年(都筑区と中区)、女性2.4年(青葉区と南区)でしたが、令和2年(2020年)は、男性4.4年(青葉区と中区)、女性1.5年(青葉区と鶴見区・南区)となり、この10年でその差は縮小しています。  平成22年(2010年)以降の平均寿命と比較すると、男女共にこの5年間及びこの10年間でいずれの区の平均寿命も延伸していることがわかります。各区の延びを見ると、男性は鶴見、中、南、港北区、女性は保土ケ谷、中、鶴見、南区などの延びが大きくなっています。  令和2年(2020年)の市区町村別生命表によると、男女共に全国上位20位以内に入る青葉区と都筑区は、高い水準にあることがうかがわれます。男性では青葉区(全国第2位)、次いで都筑区(全国第8位)、金沢、港北、栄、戸塚区が全国上位50市区町村に入っています。女性では青葉、都筑区が全国上位50市区町村に入っています。  なお、全国下位50市区町村に入っている区はありません。 イ 健康寿命  平均寿命が「生まれてから亡くなるまでの期間」であるのに対し、健康寿命とは、その内「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことです。日常生活の制限には、日常生活動作や外出に加え、仕事、家事、学業、運動等も含まれます。  厚生労働省研究班が公開している「健康寿命算定プログラム」を用いて、横浜市独自に健康寿命と平均寿命を算出しています。全国の健康寿命は厚生労働省が公表しているものです。  健康寿命は平成22年(2010年)から令和元年(2019年)の9年間で、男性1.67年、女性0.87年延びています。  しかし、健康寿命の延伸とともに平均寿命も着実に延び、健康日本21(第二次)によって定められた目標「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」については、健康寿命の増加分の方が男性0.07年、女性0.13年下回り、目標に達するには至りませんでした。  平成22年(2010年)から令和元年(2019年)の健康寿命の延びは、全国(男性2.26年、女性1.76年)と比べて、男性0.59年、女性0.89年短く、特に女性の延びが鈍化しています。 <健康寿命の算出方法>  3年に一度の国民生活基礎調査の大規模調査年に行われる健康票の調査結果と、その年の人口及び死亡数を基礎情報とします。①国民生活基礎調査から横浜市の性・年齢階級別の日常生活に制限のない者の割合を得た上で、②生命表(ある期間における死亡状況(年齢別死亡率)が今後変化しないと仮定したときに、各年齢の者が1年以内に死亡する確率や平均してあと何年生きられるかという期待値などを死亡率や平均余命などの指標(生命関数)によって表したもの)を用いて、横浜市の定常人口と生存数を得ます。③性・年齢階級ごとに、定常人口に日常生活に制限のない者の割合を乗じることにより、日常生活に制限のない定常人口を求め、④次に、その年齢階級の合計を生存数で除すことにより、「日常生活に制限のない期間の平均」を得ます。 <「日常生活に制限がない者」とは>  国民生活基礎調査(健康票)において、「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」の問に対する回答「ある」「ない」のうち「ない」を回答した者です。  ウ 健康寿命の延伸に向けた分析  健康寿命は「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を示しているため、どのような傷病(病気やけが)が日常生活の制限を生じさせているのかを分析し、健康寿命の延伸に向けた効果的な対策について検討しました(横浜市との包括連携協定及び覚書に基づく、横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻による分析。以下「市立大学による分析」という。)。  令和元年(2019年)の国民生活基礎調査から20歳以上の市民3,668人のデータを用いて、日常生活の制限の有無と、病院や診療所等に通っている場合の傷病名の関連を調べました。その傷病を有する人が存在しなくなった場合に、「日常生活の制限あり」の人数が何%減少するのか(人口寄与割合:PAF)を年代別に推定しました。  対象とした36種類の傷病のうち、統計学的に意味があったのは28種類で、その中でも腰痛症(40歳以上)、高血圧症(60-74歳)、眼の病気(75歳以上)、うつ病やその他のこころの病気(20-59歳)に関する対策が、健康寿命の延伸に効果的である可能性が示唆されました(PAF:10%以上)。その他、20~59歳の働き・子育て世代について、生活習慣との関連が大きい傷病では、歯の病気、脂質異常症、肩こり症への対策も効果的である可能性が示唆されました(PAF:5%以上10%未満)。 (2)区別に見る平均自立期間 <区別に見る平均自立期間>の要点 ・平均自立期間を区別に見ると、男女共に市平均よりも有意に長い区(青葉、都筑、戸塚、栄区)と有意に短い区(鶴見、中、南区)があります。この10年の延びについては、平均自立期間が比較的短い区で延びが大きくなっており、区間差は縮小傾向にあります。 ・横浜市全体の平均自立期間は、この10年間で男女共に延びていますが、女性については、延びが減少となっている区もあります。  区ごとの健康寿命の算出は、国民生活基礎調査の調査対象者数が少なく困難です。そのため、健康寿命の補完的指標とされ、かつ区ごとの算出が可能な「平均自立期間」を横浜市独自に参考値として算出しています。  平均自立期間とは「日常生活に介護を要しない期間の平均」を指します。ここでは、介護保険法の要介護認定における1号被保険者(65歳以上)の「要介護2~要介護5」を、介護を要する状態としました。  ただし、介護保険制度の変更による影響を受けやすく、実際の健康状態の変動とともに、算出上の誤差が発生するため、他集団との比較よりも同集団の経年変化に着目し、誤差の影響をならすために3年間の移動平均値を用いる姿勢が適切とされています。同じ算出プログラムを用いて、市独自に「平均寿命」も算出できますが、厚労省が5年に一度発表する「市区町村別の平均寿命」とは算出方法が異なり、一致しないことを理解して利用する必要があります。  健康寿命が6歳以上の調査対象者の主観としての日常生活上の制限を捉えていることに対し、平均自立期間は65歳以上の介護保険の要介護認定を利用していることが相違です。  令和3年(2021年)の横浜市民の平均自立期間は、男性80.25年、女性84.16年です。平成23年(2011年)から令和3年(2021年)について、3年間の移動平均値で見る延びは、男性1.24年、女性0.83年となっています。  令和3年(2021年)の区別の平均自立期間と横浜市の値について、有意差検定(有意とは、偶然ではなく、統計学的に意味があること)を行ったところ、横浜市の値よりも有意に長い区と有意に短い区があり、男女でその区の傾向は似ています。平均寿命の長い区は平均自立期間も長い傾向が見受けられます。ただし、平均自立期間が最長の区と最短の区の差は縮小傾向にあります。  平成23年(2011年)から令和3年(2021年)の平均自立期間の延びについて、延びが長い区は、男性で鶴見、中、磯子、泉、金沢区、女性で戸塚、南、鶴見、瀬谷、旭区の順となっています。一方、女性の磯子区は延びがマイナス(減少)になっています。介護が必要な人が着実に介護保険制度につながった結果とも捉えられますが、女性の健康寿命の延びの鈍化と合わせて、今後の動向に留意していく必要があります。 (3)死因別死亡数と死亡率の状況 <死因別死亡数と死亡率の状況>の要点 ・悪性新生物、心疾患、脳血管疾患の3つの疾患で死亡数の半数を占め、悪性新生物と心疾患の死亡数は増え続けています。ただし、働き世代の生活習慣病による早世は減少しています。 ・全国と比較して有意に高い死因は、男性では悪性新生物の結腸、急性心筋梗塞、肝疾患等、女性では悪性新生物(部位別では乳房)、慢性閉塞性肺疾患等となっています。 ・区別に見ると、男女共に鶴見、西、中、南区などで有意に高い死因が多くなっています。 ア 主要死因  令和3年(2021年)は横浜市民35,921人が死亡していました。この死亡総数に占める構成比を主な死因別に見ると、第1位の「悪性新生物」が全体の27.7%を占め、第2位の「心疾患」(14.6%)、第3位の「老衰」(13.8%)、第4位の「脳血管疾患」(6.4%)と続き、このうち「老衰」を除いた3つの疾患による死因で48.7%を占めています。次いで「肺炎」「誤嚥性肺炎」「不慮の事故」「肝疾患」と続きます。  死亡数の推移を見ると、「悪性新生物」「心疾患」「老衰」「誤嚥性肺炎」は増加傾向、「脳血管疾患」「肺炎」はやや減少傾向です。  なお、新型コロナウイルス感染症による死亡数については、令和3年(2021年)は、本市で552人となっており、腎不全(590人)、自殺(574人)に迫る死亡数となっています。 イ 働き世代の主要死因(生活習慣病による早世)  「心血管疾患、がん、糖尿病、慢性の呼吸器系疾患に関する若年(30~69歳)死亡率を、予防や治療を通じて減少させること」は、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)における2030年までの国際的な目標となっています。  本市においても、このような生活習慣病(NCDs:非感染性疾患)による早世を減らすことは重要と考え、30~69歳の横浜市民の死因について、急性心筋梗塞や脳血管疾患等の循環器系の疾患、悪性新生物、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器系の疾患の合計について独自算出しています。  粗死亡率(人口10万人あたりの死亡者数)の推移は、男女合計では平成27年(2015年)の203.7から令和3年(2021年)の175.3へ、男性では260.4から223.0へ、女性では144.6から125.4へとそれぞれ減少しています。  年齢調整死亡率(※)の推移を見ても、男女合計では、平成27年(2015年)の238.7から令和3年(2021年)の207.4へ、男性では313.5から270.4へ、女性では164.4から143.4へとそれぞれ減少しています。死亡数も年齢構成の影響を取り除いた死亡の状況も改善してきていると考えられます。令和3年(2021年)時点では、男性は全国より下回っていますが、女性はわずかに上回っていることに留意が必要です。 ※年齢調整死亡率とは  悪性新生物や心疾患、脳血管疾患等は、高齢になればなるほど罹患する確率が高くなるため、高齢化が進むと死亡率は増える傾向にあります。そのため、人口構成が異なる地域間での比較や、同じ地域でも人口構成が異なる年での比較は単純には行えません。そこで、高齢化等の年齢構成の影響を取り除いて、それぞれの疾患の死亡率を比較するために使用されるのが、年齢調整死亡率で、基準人口の年齢構成と同様としたときの死亡率を算出したものです。基準人口には、平成27年(かつては昭和60年を使用)の全国人口の年齢構成に基づくモデル人口を使用します。単位は人口10万人あたりの死亡数です。横浜市健康福祉局健康推進課による独自算出では、全国及び横浜市の人口には、全国の年齢調整死亡率の算出が同時点で可能となることや、年齢不詳の人数が少なく年代別の分析に誤差が生じにくいといった点を考慮して、総務省が公表する当年1月1日現在の全国及び横浜市の住民基本台帳人口を用いました。  また、悪性新生物については特に、壮年期死亡を高い精度で評価するために「75歳未満年齢調整死亡率」が一般的に用いられることを受けて、他の疾患でもそれを中心に分析しています。 ウ 区別に見る主要死因の標準化死亡比  平成28年(2016年)から令和2年(2020年)までの期間の全国の年齢調整死亡率を1とした時の、横浜市全体及び各区の死亡の状況を比較しました(横浜市衛生研究所による独自算出)(※標準化死亡比:SMR)。  男性では、悪性新生物の結腸、急性心筋梗塞、肝疾患(ウイルス性肝炎は含まず)、老衰、不慮の事故の死亡率が全国と比較して有意(偶然ではなく、統計学的に意味がある)に高い状況となっています。区別に見ると、鶴見、西、中、南区で有意に高い死因が多くなっています。中と南の男性の肝疾患だけが、2.0を超えています。令和3年(2021年)の肝疾患による横浜市男性の死亡は444人、このうち中区が46人、南区が44人で、この2区で20.3%を占めています。一方、金沢、港北、緑、青葉、都筑、戸塚、栄、泉区は老衰のみが有意に高いか、有意に高いものがなく、全死因は有意に低くなっています。  女性では、悪性新生物(部位別では乳房)、慢性閉塞性肺疾患、老衰、不慮の事故の死亡率が全国と比較して有意に高い状況となっています。特に、悪性新生物の乳房については、区別に見ても有意に高い区が12区あり、有意に低い区はない状況です。また、不慮の事故については、有意に高い区が13区あり、有意に低い区はない状況です。令和3年(2021年)の不慮の事故による横浜市女性の死亡は492人で、このうち不慮の溺死及び溺水が209人おり、その94.7%にあたる198人が65歳以上となっています。11月~3月に不慮の溺死及び溺水が多いことも特徴です。男性と同様に、鶴見、西、中、南区などで有意に高い死因が多くなっています。また、旭、青葉、栄区のように全死因は有意に低くても、悪性新生物の乳房は有意に高い状況の区があります。都筑区は有意に高いものがなく、泉区は老衰のみが有意に高くなっています。 ※標準化死亡比(SMR:Standardized Mortality Ratio)とは  死亡率は通常、年齢によって大きな違いがあることから、異なった年齢構成をもつ地域の死亡率同士をそのまま比較することはできません。比較を可能にするためには 標準的な年齢構成に合わせて、地域別の年齢階級別の死亡率を算出して比較する必要があります。  標準化死亡比は、全国の死亡率(人口10万対の死亡数)を対象地域に当てはめて計算した死亡数と、実際に観察された死亡数とを比較するものです。標準化死亡比が1より大きい場合は全国平均より死亡率が高いと判断され、1より小さい場合は死亡率が低いと判断されます。それが有意(偶然ではなく、統計学的に意味があるということ)に高いか低いかを判定することも可能です。  (4)主要死因の推移と状況  横浜市民の主要死因である「悪性新生物」「心疾患」「脳血管疾患」のほか、主要原因は長期の喫煙習慣である「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」、様々な取組との連携が必要となる「自殺」について、死因の推移と状況をみていきます。 <主要死因の推移と状況>の要点 ・悪性新生物の部位別死亡数は多い順に、男性では肺、大腸、胃、女性では大腸、肺、乳房となっています。ただし、75歳未満年齢調整死亡率で見ると、女性の乳房と子宮の順位が上がり、他の部位に比べて早世していることがわかります。 ・75歳未満又は全年代の年齢調整死亡率について、全国値より上回って推移していたり、今後の増加傾向の可能性に留意が必要となるのは、男女の虚血性心疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、女性の肺がん、乳がん、子宮がん及び自殺と考えられます。 ア 悪性新生物  悪性新生物は死因の第1位であり、令和3年(2021年)の死亡数は9,950人(男性5,787人、女性4,163人)、死因順位は昭和55年(1980年)以降、第1位となっています。  75歳未満年齢調整死亡率(横浜市健康福祉局による独自算出)の推移は、男性では平成27年(2015年)の180.7から令和3年(2021年)の152.5へ、女性では104.5から93.5へとそれぞれ減少しており、年齢構成の影響を取り除いた死亡の状況は改善してきていると考えられます。令和3年(2021年)時点では、男性は全国より下回っていますが、女性はわずかに上回っていることに留意が必要です。  部位別悪性新生物の死亡数は、多い順に、男性では①肺、②大腸、③胃、④膵、⑤肝となっており、女性では①大腸、②肺、③乳房、④膵、⑤胃となっています。 一方、75歳未満年齢調整死亡率で見ると、高い順に、男性が①肺、②大腸、③膵、④胃、⑤肝となっており、死亡数との大幅な順位の入れ替えはありません。女性については①乳、②大腸、③肺、④膵、⑤子宮となっており、乳がんや子宮がんは75歳未満で亡くなる方の多いことが反映されてきます。 (ア) 胃の悪性新生物  令和3年(2021年)の死亡数は1,029人(男性685人、女性344人)でした。75歳未満年齢調整死亡率の推移は、男性では平成27年(2015年)の22.8から令和3年(2021年)の16.1へ、女性では8.6から5.0へとそれぞれ減少しており、年齢構成の影響を取り除いた死亡の状況は改善してきていると考えられます。令和3年(2021年)時点では男女共に全国よりも下回っています。 (イ) 肺(気管、気管支を含む)の悪性新生物  令和3年(2021年)の死亡数は1,836人(男性1,322人、女性605人)でした。75歳未満年齢調整死亡率の推移は、男性では平成27年(2015年)の27.0から令和3年(2021年)の22.1へ、女性では12.6から10.8へとそれぞれ減少しており、年齢構成の影響を取り除いた死亡の状況は改善してきていると考えられます。令和3年(2021年)時点では男女共に全国よりも下回っていますが、女性については、それ以前は全国よりも上回っている年が多く留意が必要です。 (ウ) 大腸の悪性新生物  令和3年(2021年)の大腸がん(結腸がんと直腸がんの合計)の死亡数は1,405人(男性741人、女性664人)でした。75歳未満年齢調整死亡率の推移は、男性では平成27年(2015年)の25.3から令和3年(2021年)の19.9へ、女性では15.4から13.5へとそれぞれ減少しており、年齢構成の影響を取り除いた死亡の状況は改善してきていると考えられます。令和3年(2021年)時点では、男性は全国より下回っていますが、女性はわずかに上回っていることに留意が必要です。 (エ) 乳房の悪性新生物  令和3年(2021年)の死亡数は500人(男性6人、女性494人)でした。75歳未満年齢調整死亡率の推移は、女性では平成27年(2015年)の18.4から令和3年(2021年)の17.3へと減少しており、年齢構成の影響を取り除いた死亡の状況は改善してきていると考えられますが、全国よりも上回っている状態で推移していることに留意が必要です。 (オ) 子宮の悪性新生物  令和3年(2021年)の死亡数は175人でした。75歳未満年齢調整死亡率の推移は、平成27年(2015年)の7.8から令和3年(2021年)の6.7へと減少しており、年齢構成の影響を取り除いた死亡の状況は改善してきていると考えられます。ただし、平成28年(2016年)の5.4と比較すると増加傾向にあり留意が必要です。令和3年(2021年)時点では全国よりも下回っています。 イ 心疾患  心疾患(高血圧性を除く)は死因の第2位であり、令和3年(2021年)の死亡数は5,261人(男性2,856人、女性2,405人)、死因順位は平成12年(2000年)以降、第2位となっています。75歳未満年齢調整死亡率(横浜市健康福祉局による独自算出)は、男性では平成27年(2015年)の61.7から令和3年(2021年)の68.5へと増加、女性でも17.5から19.8へと増加し、男女共に全国より上回って推移しています。  さらに、心疾患のうち、突然死のリスクがある急性心筋梗塞を含む虚血性心疾患のみを見てみると、男性では平成27年(2015年)の26.4から令和3年(2021年)の29.8へ、女性では4.5から6.3へとそれぞれ増加しています。特に、令和に入るあたりから増加傾向にあり、心疾患全体の状況も踏まえると、今後の状況に留意していく必要があります。男女共に全国よりは下回って推移しています。 ウ 脳血管疾患  脳血管疾患は死因の第4位であり、令和3年(2021年)の死亡数は2,285人(男性1,188人、女性1,097人)、死因順位は平成12年(2000年)に心疾患に抜かれて第3位となって以降、第4位の肺炎とほぼ同数の死亡者数のまま、共にゆるやかな減少傾向で推移し、平成28年(2016年)に老衰に抜かれて第4位となっています。  75歳未満年齢調整死亡率(横浜市健康福祉局による独自算出)の推移は、男性では平成27年(2015年)の31.9から令和3年(2021年)の24.8へ、女性では11.7から10.5へとそれぞれ減少しており、年齢構成の影響を取り除いた死亡の状況は改善してきていると考えられます。令和3年(2021年)時点では男女共に全国よりも下回っています。 エ 慢性閉塞性肺疾患(COPD)  慢性閉塞性肺疾患の令和3年(2021年)の死亡数は384人(男性311人、女性73人)でした。  全年代の年齢調整死亡率(横浜市健康福祉局による独自算出)の推移は、男性では平成27年(2015年)の26.2から令和3年(2021年)の22.1へ、女性では4.8から3.4へとそれぞれ減少しており、年齢構成の影響を取り除いた死亡の状況は改善してきていると考えられます。男性は全国よりも下回って推移していますが、令和3年は増加に転じています。女性については、全国よりも上回って推移していることに留意が必要です。 オ 自殺  自殺は死因の第10位であり、令和3年(2021年)の死亡数は574人(男性373人、女性201人)でした。  全年代の年齢調整死亡率(横浜市健康福祉局による独自算出)の推移は、男性では平成27年(2015年)の20.5から令和3年(2021年)の20.1へ、女性では10.6のままと、大きな変化は見られない状態です。ただし、減少傾向にあったものが令和に入り増加に転じる変化があり、女性の令和2年(2020年)及び令和3年(2021年)は、平成23年(2011年)の259人以来の200人超えとなっており、その動向には特に留意が必要と考えられます。令和3年(2021年)時点では男性は全国よりも下回り、女性は上回っています。 (5)介護が必要となった原因疾患 <介護が必要となった原因疾患>の要点 ・要介護となった主な原因としては、脳血管疾患の割合が最も多く、次いで、認知症、骨折・転倒の順となっています。 ・要支援となった原因を見ると、骨折・転倒の割合が最も多く、次いで、関節疾患(膝・股関節など)、高齢による衰弱、脳血管疾患と続いています。  令和4年度(2022年度)の市高齢者実態調査によると、要介護と認定された人のうち、介護が必要となった主な原因は、脳血管疾患(脳出血、脳梗塞など)が16.6%と最も多く、認知症15.0%、骨折・転倒13.4%、高齢による衰弱8.0%と続いています。がん(悪性新生物)は2.9%、呼吸器疾患(肺気腫、肺炎等)は1.6%、糖尿病は1.9%となっています。  さらに、要介護4、5の要介護度が高い人に限った場合も、脳血管疾患の割合がそれぞれ24.5%、24.0%と最も高くなっています。  要支援となった原因を見ると、骨折・転倒が19.7%と最も多く、関節疾患(膝・股関節など)14.1%、高齢による衰弱9.9%、脳血管疾患8.0%と続いています。 (6)その他の主要疾患の状況 <その他の主要疾患(高血圧症、脂質異常症、糖尿病、歯周病)の状況>の要点 ・特定健診の検査結果については、全国値と比較すると比較的良好なデータが多くなっています。 ・脂質異常症については、薬を服用している人は全国値よりも少ない傾向ですが、LDLコレステロールの値は男女共に高い(悪い)状態となっています。  心疾患や脳血管疾患のように、死因や介護の要因とはなりにくいものの、これらの疾患に至る背景に、高血圧症、脂質異常症、糖尿病等の生活習慣病が大きく影響することは知られています。  特定健診は、40~74歳を対象として、内臓脂肪の蓄積に起因する高血圧症、脂質異常症、糖尿病等の生活習慣病のリスクを見つけ、生活習慣の改善、病気の予防を目的に実施されているものです。NDBオープンデータの令和2年度(2020年度)の特定健診結果から、これらの疾患の状況を見ていきます。  その他、歯周病も生活習慣が密接に関係しています。糖尿病が歯周病を悪化させることや、歯周病の予防や治療が生活習慣病の改善につながることが明らかになっています。 ※NDBオープンデータとは  厚生労働省が公開しているもので、特定健診の令和2年度(2020年度)分は、様々な保険者の下で特定健診を受診した横浜市民約82万人(男性約47万人、女性約35万人)、全国で約2,900万人の特定健診のデータが集計された画期的なものとなっていますが、全国、都道府県別、二次医療圏別(横浜市全域が一つの二次医療圏)に、健診受診者の居住地の郵便番号を下に集計されたデータのみで、区別の分析は行えません。 ア 高血圧症  特定健診の質問項目で「血圧を下げる薬を服用していますか」に「はい」と回答した横浜市民は男性20.8%、女性12.4%となっています。  また、特定健診における収縮期血圧(mmHg)の平均値は、横浜市民の男性125.55、女性118.79となっています。  いずれの値も、全国値及び最上位県の値より良好となっています。 イ 脂質異常症  特定健診の質問項目で「コレステロールや中性脂肪を下げる薬を服用していますか」に「はい」と回答した横浜市民は男性13.4%、女性12.0%となっています。  また、特定健診におけるLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール:mg/dl)の平均値は、横浜市民の男性127.55、女性126.50となっています。  男女共に、薬の服用割合は全国値と比較して下回っていますが、検査平均値は不良で上回っており、男性については最下位県の値をも上回っています。  検査平均値を年代別に見ると、全年代で全国値より不良で上回る傾向にあります。50代後半以降は特に、全国値との差が大きくなっています。  なお、中性脂肪(mg/dl)とHDLコレステロール(mg/dl)は、男女共に全国値と比較して良好な状態で、女性は最上位県の値より良好となっています。 ウ 糖尿病  健康日本21(第二次)において、糖尿病の合併症の減少について「糖尿病性腎症による年間新規透析導入患者数」を評価指標にしてきました。全国値で16,247人(平成22年(2010年))、16,103人(平成28年(2016年))、16,019人(令和元年(2019年))と減少していますが、目標値15,000人には届いていない状況です。健康日本21(第三次)では、更に目標値を高め、12,000人を目指しています。  特定健診の質問項目で「血糖を下げる薬(又はインスリン注射)を服用していますか」に「はい」と回答した横浜市民は男性6.2%、女性2.3%となっています。  また、特定健診におけるHbA1c(ヘモグロビンA1c:過去約120日間の平均的な血糖の状態:%)の平均値は、横浜市民の男性5.63、女性5.50となっています。  いずれの値も、全国値及び最上位県の値より良好となっています。 エ 歯周病  横浜市民の40歳代における進行した歯周炎を有する人の割合は、令和2年度(2020年度)の調査結果は54.1%です。平成28年度(2016年度)と比較し、わずかに減少しているものの、明らかな変化はありませんでした。  令和3年度(2021年度)に横浜市歯周病検診を受診した人のうち、要精密検査と判定された人は73.5%でした。横浜市で要精密検査と判定された人の割合は、40歳、50歳、60歳、70歳の各年齢において、全国値を上回っています。 要精密検査とは、歯周病やう蝕、その他の所見等があるため、詳しい検査や治療が必要な者です。 3 健康状態、健康に関する意識と生活習慣 (1)健康状態 <健康状態>の要点 ・病気やけがで自覚症状のある者の割合は、全国とほぼ同様の状況です。通院している者の割合は全国と比較して低い状況です。 ・現在の健康状態について、1割以上の市民が不健康な状態と回答し、健康上の問題で日常生活に影響があると感じています。 ・特定健診の検査結果については、全国値と比較すると比較的良好なデータが多い中で、男性の肥満(BMI、腹囲、体重増加)については、全国平均並みとなっています。 ア 有訴者率  令和元年(2019年)の国民生活基礎調査における有訴者率(人口千人当たりの病気やけがで自覚症状のある者の割合)は、横浜市303.4(男性268.9、女性335.8)、全国302.5(男性270.8、女性332.1)であり、全国とほぼ同様の状況です。 イ 通院者率  令和元年(2019年)の国民生活基礎調査における通院者率(人口千人当たりの傷病(病気やけが)で病院や診療所等に通っている者の割合)は横浜市が388.8(男性380.2、女性397.0)に対し、全国は404(男性388.1、女性418.8)であり、全国と比較して低い状況です。 ウ 肥満・やせの状況     40~74歳を対象とした特定健診では、体重及び身長によるBMI算出(体格指数:肥満かやせすぎていないかの指標。体重Kg÷身長m÷身長m)、腹囲測定を行うとともに、20歳の時の体重から10kg以上増加しているかを問診で質問しています。  NDBオープンデータの令和2年度(2020年度)の特定健診結果を見ていきます。  BMI(kg/m2)の平均値は、横浜市民の男性24.28、女性22.16となっており、女性は全国値と比較して下回って「やせ」の傾向ですが、男性は全国値とほぼ同じです。  カテゴリー別割合でも、女性は「やせ」が多く、肥満が少ない傾向です。  腹囲(cm)の平均値は、横浜市民の男性85.99、女性79.28となっており、女性は全国値と比較して下回っていますが、男性は全国値とほぼ同じです。 エ 歯・口腔の状況 (ア) 乳幼児期、学齢期のむし歯の状況  令和3年度(2021年度)の乳幼児健診における歯科健診の結果を見ると、1歳6か月児で0.68%のむし歯罹患率が3歳児では7.0%に増加しています。  令和3年度(2021年度)の横浜市学校保健統計調査によると、12歳児(市立中学一年生)の一人平均むし歯数は、0.48歯となっています。 (イ) 咀嚼機能の状況  令和2年度(2020年度)の県民歯科保健実態調査によると、60歳代における咀嚼機能良好者(なんでも噛んで食べることができる人の割合)は72.8%でした。  また、NDBオープンデータの令和2年度(2020年度)の特定健診結果では、特定健診の質問項目「食事をかんで食べる時の状態はどれにあてはまりますか」で「何でもかんで食べることができる」と回答した横浜市民は男性83.6%、女性85.9%となっており、いずれも全国値と比較して上回っています。 (ウ) 歯の保有状況  平成29年(2017年)から令和元年(2019年)までの国民(県民)健康・栄養調査によると、80 歳で20 歯以上自分の歯を有する者の割合は64.9%となっています。 オ 現在の健康状態・悩みやストレス  令和4年(2022年)の国民生活基礎調査において、現在の健康状態と健康上の問題で日常生活に影響があるかどうか、日常生活で悩みやストレスがあるかについて確認しました。  「現在の健康状態」について、「よい」と答えた人が21.4%、「まあよい」が20.6%、「ふつう」が43.4%となっています。不健康な状態にあたる、「あまりよくない」は11.5%、「よくない」は1.7%となっています。  「健康上の問題で日常生活に影響があるか」について、「ある」と答えた人は12.2%となっており、約1割強が健康上の問題で日常生活に影響があると答えています。  「日常生活で悩みやストレスがあるか」について、「ある」と答えた人は47.0%となっています。「ある」と答えた人の6.1%が「相談したいが誰にも相談できないでいる」と答えています。 (2)健康に関する意識と生活習慣  <健康に関する意識と生活習慣>の要点 ・市民の3分の1は、生活習慣改善の必要性を感じていても行動するつもりはない、又は、関心がないと回答しており、健康への関心が薄い層への効果的なアプローチを進める必要があります。 ・運動習慣がない人や喫煙習慣がある人では、他の好ましくない生活習慣を併せ持つ傾向があります。 ・健康寿命に影響する日常生活の制限には、腰痛症(特に男性)、成人期・壮年期のメンタルヘルス(特に子育て中の女性の悩みやストレス)、成人期男性の睡眠不足、高齢期の健診・検診が関連していることがわかっています。また、就業状況の違いにより日常生活の制限がある人の割合が異なるため、職場を介した取組も効果的であると考えられます。 ア 生活習慣の改善が必要かについての認識  令和3年(2021年)1月に実施した「令和2年度 健康に関する市民意識調査(横浜市健康福祉局)」において、生活習慣の改善について、最も多くの31.9%が「改善が必要だと思い、すでに取り組んでいる」と回答しており、行動につながっていました。また、20.9%が「改善が必要だと思い、1か月以内に取り組みたいと思う」と回答しており、行動への準備が整っていました。  その一方で、「改善は必要だが、今すぐ変えるつもりはない」が28.1%であり、約3割は、必要性は感じていても行動へはつながりにくい状況が見られました。また、最も少数であるものの「関心がない」は5.2%おり、健康への関心が薄い層への効果的なアプローチを進める必要があります。  男女共に年代が下がるほど、「改善が必要だと思わない」や「関心がない」と回答する人の割合が多く、逆に年代が上がるにつれ「改善が必要だと思い、すでに取り組んでいる」と回答した人の割合が増加していました。 イ 健康への関心の有無と生活習慣の関連  アと同調査において、生活習慣の改善について「改善は必要だが、今すぐ変えるつもりはない」又は「関心がない」と回答した、健康への関心が薄い層は、どのような生活習慣をもつのかについて分析しました(市立大学による分析)。  運動習慣がない人や喫煙習慣がある人では、他の好ましくない生活習慣を併せ持つ傾向がありました。また、好ましくない生活習慣の数が多い集団ほど、その中に占める健康への関心が薄い人の割合が高くなる傾向がありました。 ウ 他の政令市との比較による生活習慣の特徴  令和元年(2019年)の国民生活基礎調査を用いて厚生労働省の研究班が算出した政令市の健康寿命の上位は、男性1位仙台市、2位さいたま市、3位広島市(本市は8位)、女性1位浜松市、2位千葉市、3位仙台市(本市は7位)となっています。これら上位3位までの政令市と本市のデータを比較することにより、本市の特徴を分析しました(市立大学による分析)。  上位3位の政令市と比較して、睡眠不足の成人期男性、健診・検診を受けていない高齢期、育児や子どもの教育で悩む成人期女性が多くなっており、これらのことへの対策が本市の健康寿命の延伸につながる可能性が示唆されました。 エ 就労先の規模と生活習慣との関連  令和元年(2019年)の国民生活基礎調査(横浜市分)を用いて、就労先の規模と生活習慣との関連を分析しました(市立大学による分析)。  日常生活に制限がある人の割合、飲酒や喫煙をする人の割合、健診・検診の受診割合については、小規模事業者(従業員29人以下)や中規模事業者(同30~299人)に就労している人に課題のある傾向が見られました。一方、大規模事業者(同300人以上)に就労している女性は、悩みがある割合が高く、こころの健康状態が悪い割合が高い傾向が見られ、就業状況を踏まえた取組の必要性が示唆されました。 4 第2期健康横浜21の振り返り (1)分野別・ライフステージ別に見る行動目標の評価  第2期計画で掲げた19項目の市民の行動目標のうち、約5割の9項目において、「目標に近づいた(A)」又は「目標値に達した(S)」となり、取組の効果が一定程度見られました。一方で、働き・子育て世代及び稔りの世代における食生活の「バランスよく食べる」と、育ち・学びの世代における休養・こころの「早寝・早起き」は「目標から離れた(C)」となっています。 分野別・ライフステージ別に見る行動目標の数値変化のまとめ 生活習慣の改善 食生活:育ち・学びの世代(乳幼児期~青年期)、3食しっかり食べる、B:変化なし 食生活:働き・子育て世代(成人期)、稔りの世代(高齢期)、野菜たっぷり・塩分少なめ、A:目標に近づいた 食生活:働き・子育て世代(成人期)、稔りの世代(高齢期)、バランスよく食べる、C:目標から離れた 食生活及び歯・口腔:稔りの世代(高齢期)、「口から食べる」を維持する、B:変化なし 歯・口腔:育ち・学びの世代(乳幼児期~青年期)、しっかり噛んで食後は歯みがき:A:目標に近づいた 歯・口腔:働き・子育て世代(成人期)、定期的に歯のチェック(歯周炎を有する割合)、D:評価が困難 歯・口腔:稔りの世代(高齢期)、定期的に歯のチェック(80歳で20歯以上)、S:目標値に達した 歯・口腔:働き・子育て世代(成人期)、稔りの世代(高齢期)、定期的に歯のチェック(歯科健診受診割合)、B:変化なし 喫煙・飲酒:育ち・学びの世代(乳幼児期~青年期)、受動喫煙を避ける、A:目標に近づいた 喫煙・飲酒:働き・子育て世代(成人期)、稔りの世代(高齢期)、禁煙にチャレンジ、A:目標に近づいた 喫煙・飲酒:働き・子育て世代(成人期)、稔りの世代(高齢期)、お酒は適量、A:目標に近づいた 運動:育ち・学びの世代(乳幼児期~青年期)、毎日楽しくからだを動かす、A:目標に近づいた 運動:働き・子育て世代(成人期)、あと1000歩、歩く、B:変化なし 運動:働き・子育て世代(成人期)、定期的に運動する、B:変化なし 運動:稔りの世代(高齢期)、歩く、外出する、B:変化なし 休養・こころ:育ち・学びの世代(乳幼児期~青年期)、早寝・早起き、C:目標から離れた 休養・こころ:働き・子育て世代(成人期)、稔りの世代(高齢期)、睡眠とってしっかり休養、A:目標に近づいた 生活習慣病の重症化予防:働き・子育て世代(成人期)、稔りの世代(高齢期)、定期的にがん検診を受ける、A:目標に近づいた 生活習慣病の重症化予防:働き・子育て世代(成人期)、稔りの世代(高齢期)、1年に1回特定健診を受ける、B:変化なし 評価段階ごとの項目数 S:目標値に達した : 1項目 A:目標に近づいた(統計的に有意に改善、3%以上の改善、目標と同じ方向) : 8項目 B:変化なし(統計的に差がない、3%未満の変化) : 7項目 C:目標から離れた(統計的に有意に悪化、3%以上の悪化、目標と逆方向) : 2項目 D:評価が困難(基準変更や調査項目変更に伴い評価が困難) : 1項目 合計 : 19項目 (2)横浜市女性の健康寿命の延びの鈍化  全国と比較可能なデータ等を踏まえて、横浜市の女性の健康課題を捉えるとともに、女性の就労人口の増加を受けて、特に働き子育て世代の女性の健康づくりやヘルスリテラシーの向上につながる支援の取組を検討することが必要です。 (3)健康に望ましい行動を取りやすくする環境づくりの必要性  いわゆる健康無関心層の具体像をとらえ、どのようなアプローチが効果的であるのかを探る必要があります。市民がその興味関心や嗜好にかかわらず、また社会的・経済的な状況に左右されることなく、自然と健康に望ましい行動を選択するためには、行動科学の視点からどのような仕掛けが必要なのか、健康増進以外の部門や関係機関・団体、民間企業、大学等と連携し、市としてできる環境づくりの取組を検討していきます。 (4)健康格差縮小の視点の必要性 ア 区の健康課題への取組  区の取組推進に向けて、必要性と実行可能性が高い取組の見極めにつながるデータ活用や、PDCAサイクルによる各種事業の推進を総評するために、データに基づく課題解決のためのフレームワーク(PPDACサイクル)の要素も取り入れたマネジメントが行えるよう、区を支援していきます。  また、健康に望ましい行動を取りやすくする環境づくりなど、健康格差の縮小の視点を取り入れた市域全体における具体的な取組を検討していきます。 イ 様々な立場の市民への支援  健康寿命の延伸ばかりが強調されることにより、病気になった後でも暮らしやすいまちづくりの視点が欠けることがないよう、SDGs目標3の「全ての人に健康と福祉を」も踏まえ、各分野の取組において、病気・障害などによる様々な健康状態の市民が健康づくり活動に取り組めるよう支援する視点も必要となります。 (5)ライフコースアプローチの視点の必要性  ライフステージ別の取組は当該世代の健康課題に対応するだけでなく、次の世代に進んだ際に予測される生活習慣病等の健康課題を未然に防ぐことができる効果的な取組も期待されています。健康づくりの連続性や継続性を意識した目標設定や取組を検討します。  5 横浜市民の主要な健康課題の選定 <横浜市民の主要な健康課題の選定>の要点 ・市民の死亡原因の半数を占める悪性新生物、心疾患、脳血管疾患の予防に加え、全国データと比較して改善の余地があるもの、健康寿命の延伸への寄与が大きいものなどを主要な健康課題として選定し、その改善を目指します。 ①生活習慣病(心血管疾患、がん、糖尿病、慢性の呼吸器系疾患)による早世の減少 ②男性の肥満や脂質異常症の改善 ③女性の乳がんの死亡率の減少 ④糖尿病の重症化の予防 ⑤喫煙・受動喫煙の減少 ⑥歯周炎の予防と改善 ⑦腰痛症の予防と改善 ⑧骨折・転倒により介護が必要な状態となることの減少 ⑨高齢期の不慮の事故による死亡率の減少 ⑩成人期・壮年期のメンタルヘルスの向上  横浜市民の健康を取り巻く現状分析の中から、その重要性や予防効果の表れやすさ、改善の余地、健康寿命の延伸への寄与といった(1)~(3)の視点により、第3期計画で取り組む必要性の高い、横浜市民の主要な健康課題を選定して、(4)にまとめています。 (1)悪性新生物、心疾患、脳血管疾患等の予防の重要性  悪性新生物、心疾患、脳血管疾患の3つの疾患で市民の死亡原因の半数を占めています。また、これらの疾患を含む若年(30~69歳)死亡率の減少は、持続可能な開発目標(SDGs)の国際的な目標でもあり、予防に向けた取組を継続していく必要があります。これらの疾患を引き起こす要因にもなる喫煙・受動喫煙、糖尿病の重症化等への対応も重要と考えられます。 (2)全国データとの比較により改善の余地がある課題への取組強化  健康に関するデータの全国値との比較により、乳がんの早期発見(女性)、冬場の入浴時の不慮の事故(高齢者)、肥満や脂質異常症(特に男性)については、本市のデータに改善の余地があります。取組の強化や新たな取組が求められています。 (3)健康寿命の延伸への寄与の大きい要因への着目  健康寿命に影響する日常生活の制限には、腰痛症(特に男性)、成人期・壮年期のメンタルヘルス(特に子育て中の女性の悩みやストレス)、壮年期の歯の病気、成人期男性の睡眠不足、高齢期の健診・検診等が関連していることがわかっています。また、就業状況の違いにより日常生活の制限がある人の割合が異なるため、職場を介した取組も効果的であると考えられます。 (4)横浜市民の主要な健康課題  次の10項目を主要な健康課題として選定し、その改善を目指します。 ①生活習慣病(心血管疾患、がん、糖尿病、慢性の呼吸器系疾患)による早世の減少、②男性の肥満や脂質異常症の改善、③女性の乳がんの死亡率の減少、④糖尿病の重症化の予防、⑤喫煙・受動喫煙の減少、⑥歯周炎の予防と改善、⑦腰痛症の予防と改善、⑧骨折・転倒により介護が必要な状態となることの減少、⑨高齢期の不慮の事故による死亡率の減少、⑩成人期・壮年期のメンタルヘルスの向上、とします。